2013/02/28

除染問題のタブーを破る時期が来ている

2013年2月28日開催の衆議院予算委員会の集中審議で、玄葉光一郎議員(民主)が質問に立った。

遅遅として進まない除染・中間施設建設に関して、「避難している方々に先祖代々の土地を手放すこともお願いしなければならないのではないか」という いままでタブーとなっていたことに言及した。[1]   玄葉議員は福島県選出であり、2011年8月に「放射性物質に汚染された汚泥やがれきなどの中間貯蔵施設を(福島)県内に設置すべき」[2]と述べているが、今回は更に踏み込んだ意見を述べた。

除染を早める観点から、現実的な提案であると考えるので、以下のとおり議事録を掲載する。

ただ、玄葉議員の質問のやり方がお粗末だった。①事前に担当大臣を呼んでいなかったこと、また、②安倍首相に対して「福島に対し思い入れが無い」などと口走ったため、せっかくの問題提起が台無しになってしまった。まずは民主党時代の反省を述べ、総理の答弁に補足する形で自説を述べるべきであった。


ビデオ(時間 0:00~9:00)


H25/2/28 衆院予算委員会外交集中審議・玄葉光一郎 [1]

(玄葉光一郎議員)
まず、福島の復興について質問いたします。総選挙以来、週に3~4日のペースで現地・現場に立っています。「現場に神宿る」ではありませんけれども、いろんなことが2ヶ月間歩いて判ってきました。そこで、冒頭ですね、いくつかお聞きしたいと思います。

まず、安倍総理は、「福島の復興遅れている、加速化させる」と繰り返しておりますけれど、福島の復興の何が遅れているのか、その要因は何だというふうに考えていますか?


(安倍晋三首相)
福島においては、地震と津波だけではなくて、福島第一原発の事故がございました。そこで何が遅れているかといえば、基本的には、被災された方々が元の生活に戻ること、それが遅れているわけであります。

そこで何が原因かといえば、例えば、除染の問題であります。そしてその除染の問題と同時に、それは除染する必要のないところも含めて、移って元々の故郷に帰れるかどうか、あるいは高台移転も含めて、そうした住宅の建設についても実際遅れているわけであります。

そこで、何が原因かということについては、やはり省庁の縦割りが残念ながら残っていて、復興庁ができましたが、復興庁が完全に司令塔として機能を果たしていない。予算がついても、結局紐付きになっていて、その執行において地元の方々の声を十分に吸収しながら、縦割りを廃して、その執行ができていないという点もあります。

さまざまな規制もあれば、法律的な壁があるわけでございますが、たとえば農地転用のようなことですよね。まぁ、そうしたことが残念ながら、これは復興を急ぎたい、という皆さんの声に沿った形で打破されていない、ということに問題があったと思います。


(玄葉議員)
あの、本質的な話だけで、今日はいいんです。一言でいえば、生活再建、そして、除染だと思うんですね。除染はなぜ遅れているんですか?


(安倍首相)
除染について言えば、これは復興庁というよりも、環境省の所管であったわけでございますが、しかしこれ環境省と復興庁にまたがっていたのでありますが、なかなか環境省だけでは手に余ることもあったわけでございまして、我々は、それはむしろ復興庁によって除染についてもですね、権限をもって司令塔としてやってもらいたい。しかしもちろん、執行は環境省が行うわけでございますが、基本的に根本大臣のもとで、この除染についても、行っていくということを決めたところであります。


(玄葉議員)
2ヶ月ずっと歩いて、率直に申し上げて、体制の問題ではありません。結論から言うと、結局、タブーを破る時期が来ている、ということではないかと思っているんです。つまりですね、除染がなぜ進まないかといえば、中間貯蔵施設ができないからです。

そして、中間貯蔵施設ができないから、仮置き場もできないんです。だから除染がすすまないのですね。じゃ、なぜ中間貯蔵施設ができないのかというと、これは復興の哲学にもからむ話しでありまして、復興の哲学は、蘇らせる、戻す、あるいは戻る、ということが基本だと思うんですね。この基本は変えるべきではない、と思うんですが、中間貯蔵施設を作るということは、ほぼ同じ土地には戻らない、先祖代々の土地、守り継いできたその土地を手放すということであります。

今までですね、なかなかですね、このタブーを破れなかった、ということではないかと思うんですね。時間も必要であったと思うんです。誰が悪かったということではないと思うんです。気持ちを整理する時、時間、これも大切だったんです。

ですから、蘇らせる、戻す、戻る、こういう復興の哲学、理念というものを基本にしながらも、併せて、戻れない方々がいる、あるいは、住民意向調査が出てきました、もし除染が進んでも、戻らないという方々もいらっしゃいます。戻れない、戻らない、そういうことも並行してね、表で議論を始める時が来た、と。当然、先祖代々の土地を手放すわけですから、そういった方々の気持ちを十二分に忖度をしながらね、そういう議論をしていく、と。ここができないと、ずっと遅れていると言われるのです。どうですか?


(安倍首相)
その議論については我々も最初から問題意識を持っていて、そして当然それについては我々は議論を進めています。今、担当大臣を呼んで頂いていないんで、詳らかに進捗状況は説明できませんが、これはまさに担当の大臣も現地に入ってですね、今の問題点はもちろん我々の政権において着実に決断をして、進めていくということはお約束したいと思います。


(玄葉議員)
あのね、実際進んでいないんです。私もね、泥を被るつもりで言っているんですよ、総理。泥を被るつもりで言っているんです。つまり、表で議論をするということをしていないんです。これ、復興に与野党はありませんから、私も野党ですけど、泥を被ります。そして、是非様々な、提言をこれから福島の復興についていたしますから、委員長、この場でもですね、是非、福島の復興、あるいは、被災地の復興について集中審議を含めてですね、精力的にこの委員会での議論をお願いしたいというふうに思います。

あの、ちなみに、安倍総理は、福島に3.11以来、総裁になられるまで、1年半位ありました、比較的時間があったのではないかと思いますが、どのくらい福島の被災地に足を運ばれましたか?


(安倍首相)
総裁になってからですか。(玄葉議員:総裁になるまで)総裁になる前に・・・今急に質問されましたから、え、分かりませんけども、3回ぐらいですかね、だと思います。

それとですね、先ほどの質問でありますが、しかしやはり、今、玄葉さんも認められたように、民主党政権では、やはりやり方もうまくいかなかったのですよ。基本的やり方自体も、進め方も。だから遅れているのではないですか。そういうことはしっかり認めたほうが良いですよ。その上に立って我々は、違うアプローチをします。そのことについて説明をしてもらいたいのであれば、最初から担当大臣を呼んで頂ければ良かったんですよ。どういう進め方をしているか、ということについて、中身のある議論をできます。

しかも、今は議論をしている時ではないんですよ。実際に何をやるか、ですから、我々は何をやるべきことをやっています。それを説明して欲しいのであれば、担当大臣を呼んで頂きたいと思いますね。


(玄葉議員)
哲学と理念の話しをしていて、私、今回の質疑を通じてですね、どうも安倍総理、やはり福島に思い入れがあまり無いな、と思って、残念に思いましたけれども、やはり与野党なくね、これを進めて、しかも、私は泥を被って今日申し上げているんですよ。それをですね、あの、そういう言い方をされるというのは、私は非常に残念だというふうに思います。(以下はTPPに関する質問なので、省略。)



「中間貯蔵施設 県内に設置必要」 玄葉氏がインタビューであらためて強調 (2011/08/31、福島民報)[2]

国家戦略担当相と民主党政調会長を務めた玄葉光一郎衆院議員(本県3区)は内閣総辞職を受け30日、福島民報社のインタビューに応じ、東京電力福島第一原発事故により放射性物質に汚染された汚泥やがれきなどの中間貯蔵施設を県内に設置すべきとの考えをあらためて強調した。
玄葉氏は「市町村内で仮置きが続けばいつまでも県民の不安は解消されない。早く決断しないと除染が進まない」と中間貯蔵施設の必要性を訴えた。さらに国が廃棄物の容量を小さくする技術開発に取り組んでいることを明らかにした。「政治家として県民の生活を考え、県民の耳に痛いことも説明しながら決めていくことが大切」との見解も示した。
中間貯蔵施設をめぐっては27日、当時の菅直人首相が県庁で佐藤雄平知事と会談し、県内に設置したいとの方針を表明。佐藤知事は「突然の話。非常に困惑している」と不快感を示した経緯がある。

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追記(2013/03/11)

「戻らない議論もすべき」 玄葉氏、中間施設整備で
(2013/03/01、福島民友ニュース)[3]

玄葉光一郎衆院議員(福島3区)は28日の衆院予算委員会で、県内の除染で出た汚染土壌などを保管する中間貯蔵施設整備が進まない現状を踏まえ「よみがえらせる、戻る、戻すという復興の理念を基本としながらも、戻れない、戻らないということも平行して表で議論を始める時が来た」と述べた。安倍晋三首相は「その問題点はわれわれの政権で着実に決断して進めていくことを約束する」と答弁した。
玄葉議員は、東京電力福島第1原発事故により戻れない人が出ることの議論を始めることについて「タブーを破る時期が来ている」と表現。「中間貯蔵施設を造るということは、ほぼ同じ土地には戻らない、先祖代々の守り継いできた土地を手放すということ」と指摘した上で、復興庁などが実施した住民意向調査で、「除染が進んでも戻らない」と回答する住民が出ていることも踏まえ「表で議論を始める時が来た」「野党だが泥をかぶるつもりで言っている」とした。
玄葉議員は委員会質疑後の福島民友新聞社の取材に対し「復興の理念は尊重しながらも、現実は直視しなければならない」として、帰還できない地域については「中間貯蔵施設が設置される土地と、これまで一度議論になった東電福島第1原発の周辺が考えられる」と述べた。

参考資料
[1] H25/2/28 衆院予算委員会外交集中審議・玄葉光一郎(ニコニコ動画)
[2] 「中間貯蔵施設 県内に設置必要」 玄葉氏がインタビューであらためて強調 (2011/08/31、福島民報)
[3] 「戻らない議論もすべき」 玄葉氏、中間施設整備で (2013/03/01、福島民友ニュース)

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